富山「銀鱗」閉店に想う
先日、朝刊を広げた瞬間、
富山市の割烹「銀鱗」が20日閉店!の見出しが目に飛び込んできて
とても驚いた!
「銀鱗」へ初めて行ったのは、十数年前・・・・・
酒蔵を移築した重厚な店構え、京都から移築したという朱色の塀、
さも自然に植えられた木々や花々、手水鉢から溢れる水・・・・・・。
店内へと導く大きな石がはめ込まれたアプローチを歩いてゆくと
いけす をグルリと囲んだ、大きく重厚なカウンターが目に飛び込んできて、
「うわー、すごーい!」と思わず声をあげたのを覚えています。
(いけす の中ではイカや鯛がス~イスイ♪)
壁に掛けられた富山の鬼才-篁牛人(たかむらぎゅうじん)の大きな水墨画。
冴え冴えとした青壁。
数え上げると まだまだ沢山ありますが、
細部までこだわった造りに、ただただ驚きました。
お昼の定食を頂きましたが、とても美味しくボリュームもあり、
一度に大ファンになってしまい、以来、
富山へ行ったら食事は「銀鱗」が定番となりました。
ある時、「ちょっと隣を見せて頂いてもいいですか?」とお願いすると、
嫌な顔ひとつされず
「どうぞどうぞ」と、社長様自ら隣接する別棟を案内して下さった事がありました。
別棟は広いスペースに水苑を造り、友禅流しさながらに反物が浮かべ、
大きな新緑の紅葉が斬新に活けてありました。
周りには趣の異なったお座敷が点在し、太鼓橋を渡ってお部屋へ入るという心躍る演出。
(採算性を第一に考える人ならば、近いところに大きな宴会場をつくるでしょうに・・・・)
近年、味気ない積み木のような箱物の店が多い中、
こんな遊び心溢れる本物を目指したお店が閉じてゆくなんて・・・・・・寂しい。
新聞に大きく「閉店」と掲載されたコトで、大勢の客で大混雑・・・・とは予想しつつ、
(普段は時々しか行かないのに・・・・私も含めて、人と言うのは勝手なものです)
さりながら、「銀鱗」の名の元、
意匠を凝らした店内が見納めだと思うと行かずにいられず、
予約の無かった先日、家族で出掛けました。
感謝セールをいうコトで、ワンドリンクサービス、
店員さんのお勧めのコースを注文すると、食べきれない程
次から次へと料理が運ばれてきました。(美味しかった)
何度となくお会いして印象に残っている仲居さんが、
「私の顔を忘れないでね・・・・・」と呟くように話しました。
・・・・・・・・言葉の奥にある沢山の想いが痛い程伝わってきて、
グッときてしまいました。
店には次々と馴染の方が、(おそらく私達同様)
閉店を惜しむように訪ねて来ます。
帰り際、ささやかなお土産を持っていった私に
女将さんが 満寿泉生純米吟醸 をプレゼントして下さいました。
握手すると
「生涯現役でやりたかったんだけどね・・・・・」と話されました。
心の中で「やってほしかったです」と呟きながら、
「ありがとうございました」とお礼を伝えました。
私のような弱輩がおこがましいと思いますが、
激戦区、富山市中心部にあって
43年もの永きに渡って個性あるお店を続けた努力は
間違いなく称賛に値します。
「富山へ来て新鮮な魚が食べたい時は銀鱗!」
間違いなく、多くの人々に愛されていたお店でした。
多くの事を教わりました・・・・・・私は忘れません。
社長様、女将さん、スタッフの皆さん、お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
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